映画「ハイヒールの男」を見ました。この恋は初めてだからでとても良かったイ・ソムが出演しているのでちょっと気になるな~と思って見始めたんですが、アクションの激しさと対照的に切ない悲しみが描かれている衝動と繊細さを兼ね備えた映画でした。
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「ハイヒールの男」というタイトルから私が連想したのは、女装願望のある男性が出てくるストーリー。しかし、そうではなくて女になりたいという願望を持つ性同一性障害の男性のお話でした。その主役の刑事ジウクを演じるのは、チャ・スンウォン。屈強な筋肉、破壊的な戦闘力を持つ刑事で男の中の男と呼ばれて、その動きの鮮やかさはチンピラからにもファンが出来るほど。とにかく強い。
しかし、彼がわざと男性的な道を選んだのは「女になりたい」という気持ちを消すためだったのです。でもどんなに最強の男になってもその願望が消えなかった彼は、刑事を辞めて、海外で性転換手術を受けようとするのでした・・・
本当の自分の気持ちをいけないものだと受け入れることが出来ずに、自分の希望とは逆の方向へ進んできたジウクという人がとても切ない。彼が強ければ強いほど私の心は苦しくなるのです。
イ・ソムの存在は少しミステリアス。ジウクの大切だった人の妹。
赤いドレスとバラのタトゥーが素敵。彼女の醸し出す独特の雰囲気がとても好き。
ジウクの強さに憧れるホゴン。義兄に裏切られて、やられる訳にはいかない闘うのだけど、結局一枚上手の古狸に利用されて帰り討ちに合うのだった。最後の彼の空っぽな表情が見事で、恐ろしいけど見とれてしまうような気分だった。
ジウクの良き後輩のジヌ役はコ・ギョンピョ。最近、見る映画見る映画に出ていてビックリする。彼は悪役もいい人の役もこなせるけれど、こういう少しぼんやりした優しい男を演じているのが一番似合う気がしている。
ジウクに「さっきは言えなかったけど、綺麗でした」というジヌの言葉は、人間のジウクをそのまま受け入れたように聞こえたのだった。
しみじみとなかな良い映画だったと思えたのだけど、少年時代の描写だけ少し気になる。男性を好きになるというのが特殊で生きづらいものだったとしても少年たちは片思いではなくて愛し合っていたのだから、あんな風に1人で自殺を選ぶ気がしなくて。他の誰に分かってもらえなくても、好きな相手が分かってくれたら生きていける気がしてしまう。引っ越して離れてしまうのだったとしても。
少年たちの愛とは儚く美しいものであるという偏った視点で美化した描き方をしてしまったように感じてしまい、そこだけとても気になったのでした。
人間の心の複雑さは定義できるものではないのだなあ。こうあるべきという同調圧力がすっかり無くなって、人それぞれが本当に希望する道を進んでいける日が来るのだろうか。でも、変わり始めている息吹きを少しずつ感じる気が私はしているよ。