【台湾映画】憂鬱な楽園 の感想 三人と南国の空気感がとても良い

今日は昨日に引き続き、ホウ・シャオシェンの映画の感想を書きたいと思います。この憂鬱な楽園は、フラワーズ・オブ・シャンハイと2本立ての上映で映画館で鑑賞しました。同じ監督の作品を2本立てで見るのもいいなあと思いました。どちらも全く性質の違う作品ではあるけれど、根底あるものはどこか似通っているように感じたのでした。

とはいえ、フラワーズ・オブ・シャンハイはばっちばちに美術や衣装を極めてるけれど、憂鬱な楽園はもっとラフな撮影方法で制作されているので、振り幅が大きいとも言えますね。この作品の方がホウ・シャオシェン監督の雰囲気に近そうな気はする。

映像を通して伝わってくるのは、南国の空気感なんですよね。どこかのどかな雰囲気が漂っていて、そこが凄く好き。私が台湾映画で一番好きなところはこういう空気感かもしれないなあ。

主人公の3人、四十歳のガオ、弟分のピィエンとその恋人のマーホァはふらふらとその日暮らし。お金になる仕事があると聞くとその地に向かうので、ロードムービーみたいな風情です。ガオはそんな暮らしで実現なんて出来そうもないのに中国本土で食堂を開く夢だけは持ってたり、ピィエンは遺産を横取りされたりと、成功には程遠いところにいるチンピラたちなのだけれど、でも悲壮感みたいなものは漂っていないんですよ。何も考えていないからだよ、と言われればそれまでなんだけど、それでも生き抜く逞しさみたいなものが漂ってて、やっぱり彼の作品は「生」を主題に置いてる気がするんだよなあ。

彼らの状況であれば、もっと死に急ぐみたいな展開になったっておかしくはない気がするんだけど、のらりくらりと生き抜いていく力みたいなものを感じて、そこがいいなあと思うのでした。

この映画はそういう彼らの雰囲気、台湾の空気感を感じ取れたらそれでいいという映画なのかもな。わたしはそれでとても満足した。でも何を言いたいか分からないという人もいそうだしその気持ちもすごく分かる。

あとは、たくさんの人が集まる場所での会話?というのも監督らしさが全開ですね。カラオケ?みたいなところでの話し合いのシーンとか最高だなと思う。会話の妙みたいなものが苦しいくらいに好きだな。

他にも、ガオ・ジェが、料理をしているシーンがあまりにも上手で、さすが俳優さんは演技を極めるんだなと思ってたら、彼は俳優になる前は料理人だったとかで自前の技術だった!めっちゃ美味しそうだったもん。リン・チャンも彼の雰囲気そのままにピィエンって感じだったし、伊能静との3人のダメダメトリオがいい味出してた。

ラストのどこにもたどり着けない感じが、まさに彼らって感じで、それが人生って感じでもあり、でもやっぱりそこに悲壮感はなく、それでも生きていくんだなって思わされるのが、良いのでした。

 

憂鬱な楽園が見れるのは・・・