鵞鳥湖の夜が公開したら見たいな~と思っていたので、予習がてら見たディアオ・イーナン監督の前作、「薄氷の殺人」ですが、映画全体の出来とは違う観点でどうにもこうにも見ててしんどい気分になる作品でありました。ある一点がどうしても受け入れられなかったんだろうな。展開とか構成とか空気感などは非常に興味深いんですけどもね。
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あとあれですよね、邦題にもの申したくなりますよね。「白日焰火」という白昼の花火が大変重要な意味を持つのになあ。邦題をつけた方は、スケートのシーンが印象に残ったのでしょうかね。
さて、ストーリーとしては、映画の流れや映像の特異な美しさなどの部分など、全体としては面白い映画のように思えるのだけれど、でもそもそも描かれているものに対する嫌悪感が拭えないのは私が女性だからかもしれない。
おっさんたちの薄汚い欲望にさらされるヒロインというものが「美人だから仕方ない」とか「スタイルがいいから仕方ない」「未亡人だから仕方ない」と受け止められるかどうかが、この作品を評価できるかどうかの境目なのだろうけど、私には仕方ないと受け止められないのであった。それは多分「肌を露出しているから、派手な服を着ていたから、だから痴漢にあっても仕方ない」と言っているのと同義のように感じてしまって、私は決してそうではないと思っているので、同じくこの映画を冷静な気持ちで見られないのであった。ファム・ファタールなんて言葉でウー・ジージェンを表すのは男の身勝手だよ・・・
それはすでに冒頭の部分から感じてしまったのですが、刑事が妻と離婚する際にもう一回だけって真昼間から駅でレイプしようとしているシーンからもう無理だった。そうあれはまだ二人がまだ夫婦だとしても違うとしてもレイプだよなと思うのです。あれを男ってそんなもんだ、とか彼は愛に不器用だからなんて言葉で理解なんてもしたくないんだけど、それが伏線で全体的にそれが罪じゃないっていう流れなんだよなあ・・・ううむ。
そういう目で見ていくと、刑事、クリーニング屋の店長、ナイトクラブの店長などが勝手に彼女に欲望を抱いて、彼女を追い詰めてるだけの話やん?と思ってしまうのであった。だからってもちろん殺人はあかんけども、その前提にあるおっさんたちの罪を罪とも思わずにやっている部分を見てると嫌悪感しか湧かないのであった。それをなんかおさまりの良いサスペンスだ~なんて賛美する気には全くなれないな。ただ、田舎ではよくあること、昔はよくあることだったのかもしれないけど、それにしてもなあ。人間の業を描いてるんだよ~って言われそうだけども、それってあくまでも男性側からの視点じゃない?ぞっとする。
最後の彼女のほほえみは、捕まって刑務所に行くことでああいう男たちからとうとう逃れられることへの喜びなんだと思う。刑事のことを馬鹿なやつと思っているのと同時に彼女が犯人だと突き止めてくれて、そういうやつらとおさばできることへの感謝というか嘲笑というか。そんな風に受け止められてしまったな。ファム・ファタールとかじゃなくてさ、ほっといてくれよって感じだろうな。彼女からしてみれば。
そういう猥雑な人間の性をわざと描いているのか、無意識に描いているのか、監督の他の作品も見てみたい気がする。ま、多分、鵞鳥湖の夜は見ると思うので、そこできっと分かるでしょう。
という感じで印象的な映像の素晴らしさや構成の妙とかそういう観点では全く語れなくてすいません!私にとってはただひたすら、なんだかなあ・・・と感じてしまうストーリーでした。ま立場が違えば見え方も違うよねっていうことで、こんな感想があってもいいんじゃないでしょうか!知らんけど!