【香港映画】イップ・マン 序章 の感想 ドニー様の詠春拳と表情が素晴らしい~

これもいつか見ようと思いつつ先伸ばしの映画の「イップ・マン 序章」をやっと見ましたよー!引き続きシリーズの「イップマン 葉問」も見なきゃだな!

 

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イップ・マン(葉問)は、ブルース・リーも師事したという詠春拳の師匠として有名ですねー。ドニー・イェン(甄子丹)が演じてるんですけど、武術を使うシーンは非常に美しい!

詠春拳って女性の使い手が多いイメージがなんとなくあったんだけど、動き自体がやや小さくまとまっているので、小さい女性にも使いやすい武術なのかもしれない。

そして、彼を助ける工場長の友人、チンチュンを演じるのは、サイモン・ヤム(任達華)。通訳のリー・チウを演じてたのはラム・カートンで、あれこの組み合わせ最近見たな~と思ったら「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」で敵味方で出てたんだった。この出演者がかぶってるのが香港映画っぽい~

そしてイップ・マンの奥様を演じてるのが、リン・ホン。凛とした佇まいが美しいですね。静かな恐妻って感じでもあるのだけど、品が良くそして愛ゆえと分かるのでなんだか素敵なのだった。彼女は、王子様の条件の時みたいに華やかな洋服を着ているのも美しいけれど、旗袍を着てる姿もとても素敵。決め手は伸びた背筋なのだなあ。

とにかく建物の意匠やインテリアが素敵なんですよね。

茶館の内装もいいなあと思って見ていたんですけど、日中戦争が始まる頃が時代背景とあって、その後は風景がまるで変わってしまいます・・・

こういうのを見るとやっぱり戦争ってとても悲しいものなんだな、と思う。奪われる日常。この時は敵が日本だけれど、相手が誰とかとに関わらず戦争というのはすべきものではないのだよな。

三浦役は池内博之。彼はわりとよく香港映画に出ている気がしますね。この映画の中で三浦は武術に対して敬意を払っている人として描かれていて、その部下の渋谷天馬が演じた佐藤が非道な敵国人としてタイプを分けて描かれていた感じ。でも妙に渋谷天馬の演技の方が印象に残る。まあラストの三浦とイップ・マンの闘いが驚くほどあっさりしてたせいもあるのかもしれない・・・

どうしてもこの時代の映画となると日本が戦争の相手国として出てきてしまうので、見てるのが辛いところもあるのだけど、日中戦争があったのは事実なので、逆にこれからはそういうことが起こさないようにどういうことがあったのか冷静に知っておきたい気持ちはあります。

まあそういう部分は置いておいても、やっぱりドニー様のアクションは最高に美しいし、そしてなによりも昔からずっと顔もアクションのキレも変わらなすぎで驚いちゃう。初めて見た「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」で目を奪われたあの動きと同じ感動を今も与えてくれるなあ・・・と思うのでした!

 

 

イップ・マン 序章が見れるのは・・・




【香港映画】ドラゴン危機一発 の感想 ブルース・リーは歩く姿がすでに美しい

カンフー映画大好きなんですけど、私がそういうのを見始めたのは李連杰、つまりジェット・リーからなので、まだまだ経験が浅いのであります。

なので、ジャッキー・チェンの映画は有名なのを見たことがある程度だし、ブルース・リーに至っては名前は知っているけれど、実際に出演作を見たことはなかったんですよね。(あ、息子のブランドン・リーのクロウ/飛翔伝説は見たことがあってサントラを買ったくらい大好きですが!)だけど、とうとう今回「ドラゴン危機一発」でブルース・リー出演作を初体験したのでした。いや、あれですね。いつか見ようとかいつかやろうと思ってることはともかくすぐにやる方がいいな。なんだかそんなことを思いました。百聞は一見に如かずであります。

 

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それにしても、しょっぱなからワー!って盛り上がったのはこれ。

そう、ドゥンドゥンドゥンドゥンって一個ずつ四角が現れて、あ!ゴールデンハーベストのだ!と嬉しくなってしまうくらいにはここの映画を見ているようです。私。

 

まず、ストーリーはさておき、なんだかどう見ても香港じゃない場所だなあと思ってたら、タイで撮影されたものみたいです。氷工場の人も仲間たちも広東語を話しているから、出稼ぎに行って仲間で住ん でいるって感じなのかな。

ブルース・リー演じる主人公は、喧嘩をしないってお母さんと約束をしていて、その約束の印として翡翠のペンダントをしているんだけど、お母さんを思い出してそのペンダントを取り出して見る度に流れるオルゴールみたいな音楽がなんだか私の笑いのツボを押すもんで、なんだかすごく受けてしまった。しかも、あんなに何度も見てたのに割れた後は喧嘩しまくりなんですよ。おーい。

あとは、壁を背に人を殴ったら人の形で板壁に穴があいたりとか、お約束なんだろうけど、彼の出てる映画ってこういうのなんだ!って色々発見があったし、面白かったですよ・・・

私が今まで見てたカンフー映画とか武侠映画ってあんまり死闘って感じのじゃなくて試合っぽく戦う感じのが多かったようです。だからこの映画の闘いが完全に喧嘩、それも命をかけた喧嘩でビックリ。相手が素手だったら素手同志で闘うとかじゃなくて、相手がどうだろうがナイフとか使っちゃって倒すためにはなんでもありみたいな。それでもブルース・リーは勝っちゃうんですけどね。

確かにブルース・リーの体の動きは素晴らしくて、歩く姿さえ美しくて迫力がありました。足がどっしりと地についている感じ。あれは外旋してる足っていうんですかね。そして闘ってる間に服が切られて筋肉があらわになるシーンがあるんですが、なんていうか実際に使われる美しい筋肉を見た!って感じで、この動きにはここの筋肉が動くのか、とそんな部分に見とれたりしてしまいました。パンチを繰り出す時に動くのは肩の筋肉ではなく、むしろ背中。体の使い方の勉強になるなあ。

そして香港映画って「因果応報」の思想がある気がして、その人自体は良い人だとしても、復讐のためとはいえ殺人などを犯すとラストでその人も死んでしまうイメージなのですよね。だけど、この映画のラストでは主人公が最後に逮捕されてしまうという、おお、そう来たかというちょっと意外な結末。まあ実際に彼も仕返しのためにたくさん人を殺してしまっているんで、その形も因果応報といえるのかなとは思うんですが・・・あんなに超人的な強さを発揮しているのにこの部分だけ現実的過ぎてちょっと切ないねえ、なんてことを思ったのでした。

でも、なかなか面白かったので、他の出演作も見てみようと思います。この映画はヌンチャクは出てこなかったし、やっぱりそれを見ないと!

 

ドラゴン危機一発が見れるのは・・・
⇒Netflix





【香仏映画】冷たい雨に撃て、約束の銃弾を の感想 香港映画の様式美にどっぷりはまるのもやっぱりいいなあ

ジョニー・トー監督の「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」の映画を見ました!ああこの感じ、以前はよく香港映画を見ていた私の郷愁を誘います。この過剰ともいえるガンアクションがたまらないんだなあ・・・

 

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この映画は香港とフランスの合作映画なので、主役のフランシス・コステロ役にフランス人のジョニー・アリディ、そしてその娘役にシルヴィー・テステューが出演しています。そういう意味では合作らしくフランス風味が加味されていますが、でも内容は典型的な香港映画です。

ストーリーは、マカオで娘夫婦と孫を殺された(正しくは娘はなんとか生きてはいるけど)コステロが復讐のためにフランスからやって来て、偶然知り合った殺し屋の三人に復讐の協力を依頼。実は元殺し屋のコステロも一緒に復讐を成し遂げようとするのだけど、昔に頭に受けた銃弾が原因で彼は復讐する相手も理由も忘れて行き・・・というような内容です。

映画というスクリーンに映し出されるものという形態を意識して自覚して最大限に利用している感じがあるのです。そう映画館で見たいと思わせるような映画なんだよなあ・・・

もう見せ場は決まっているので、香港ノワールはシンプルな筋書きなのが良いのですよね。でもお約束の役者さんたちがきっちりとその期待される演技を見せてくれて、もうそれで満足しちゃう。多くは語らず表情で語る彼らの渋さはなんなんでしょうね。たまらない。

めっちゃ風がビュンビュン吹きまくる銃撃シーンは回収した古紙の塊が盾がわりで、なんじゃあれはとちょっと思ったけどもさ。

クワイ役のアンソニー・ウォン!変わらないなあ~ 久しぶりに見たけどこの雰囲気が最高。コステロが記憶を失って「復讐は意味はあるのか」と三人で話した時に、一度引き受けたから、とその先に待っているのが死だとしても行くというのがクワイなんだよなあ。もしかしたら馬鹿な生き方なのかもしれないのだけど、そこに憧れてしまうのだった。

今までやったことを無駄にはできないっていう慣性の法則ともいえるのかも。なかなか止められないんですよね。ここで止めた方が良いと分かっていても。かー!人間くさい。

チュウ役のラム・カートン、フェイロク役のラム・シューも香港映画の常連俳優。ちょっとデコボコのコンビがいいんだな。当たり前のように仲間割れなんてしないのがいいんです。彼らの絆を楽しみに見てるんだから。

そして、サイモン・ヤム!あ~やっぱり彼はこういう香港映画で悪役やってくれるのが一番落ち着きます。東京ジュリエットのデザイナー役なんて見てるこっちが落ち着かなかったわい。アリエル・リンとかとは完全に違う空気感をまとってて違和感を感じましたねえ。これ見たらそうそうこれこれ!ってあのドラマを見た時のソワソワ感が払拭されてすっきりしたのでした。

 

銃撃シーンの派手さというのは武器やアクション血が飛び散るのも含めてすべて様式美なんだなあ、と思いました。そして私はそういうをたくさん見て来てて、この様式美が私のアクションを見る時の基本になっているんだなあと改めて思いました。うん、良かったです。

ひとつ難を言うとなんでこの「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」なんて情緒たっぷり過ぎる邦題にしてしまったのかってことくらいでしょうかね。復讐の時は雨降ってないけど?って感じだし、邦題をつけた人の趣味丸出し感があって私はこれはもっと淡々とした原題の「復仇」もしくは英題の「Vengeance」のままの方が良かったなと思うのでした。私が映画を見終わって受けた印象と全く違う感触のタイトルというのもイマイチなものなんだなあと。そんなことを思いました。

 

冷たい雨に撃て、約束の銃弾をが見れるのは・・・



【仏加合作映画】中国の植物学者の娘たち の感想 こめられた表現者の思いが迫ってくる気がした

ダイ・シージエ監督・脚本の映画「中国の植物学者の娘たち」を見ました。同性愛を扱う作品ということで中国での撮影は許されず、ベトナムで撮影をしたそうです。そういうことは見た後で調べて知ったのですが、植物園の濃密な湿度感がベトナム映画のシクロに似ている気がしたので、あながち間違いではなかったということですね。あの独特なたちこめる濃密な空気がフィルムに立ち現れるのはなんだかすごいな・・・と思うのでした。

 

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ミンとアンの同性で愛し合う二人の姿はとても美しいのですが、見ながらずっと何かしらの居心地の悪さを感じていました。それは同性愛を扱っているからという訳ではありません。というのも、同じく同性愛を扱っている作品でそんな居心地の悪さを感じたことはないのですから(例えば霜花店-運命、その愛でも全く感じなかった)。なので、その原因はなんだったんだろう?と考えていたのですが、彼女たちの姿を美しく描きすぎていてなんだか「同性愛の美しい二人」を商品として視聴者が消費しているような気分になってしまったのです。ただ「愛」を描いているはずなのに許されない関係だからこそ美しいと特別なもののように描かれていることへの違和感かな・・・

この映画は、同性愛がテーマという訳ではなくて、「強い力を持つ旧体制の思想」と「許されない新しい思想」を「父」と「同性愛」で表現しているように見えます。監督のダイ・シージエがフランスに住み、中国への入国は拒否されていないものの、中国で彼の作品の販売が許されていないことを鑑みるとまさに中国と彼の存在の投影とも言える気がします。見ている途中からそれが色濃く感じられて、表現の自由が許されないことへの強い静かな憤り、哀しみが伝わってくる気がしたのでした。

それはおそらく主役のミンがロシア人と中国人との混血というところからも、彼のアイデンティティーの投影が感じられる気がしました。これは多分だけど。

ただ愛し合う二人の物語なのに、許されない愛なんてあるべきなんだろうか?なんて考えつつ、自分たちの愛を守るために兄と結婚という方法を選ぶしかない彼女たちの歪んだ思考が悲しいのでした。兄の立場や思いはすべて無視されて描かれている気がしてそこはどうかと思ってしまったけれど。彼があまりにもただの登場人物のように感じてしまったかな。

 

美しい植物園に美しい恋人同士を描き出す監督の美意識を純粋に楽しめる映画でもあると思うのですが、私にとってはフィルムに撮影されている目に見えるものよりも監督がそこに込めた別の思いが妙に存在感をもって迫ってくる不思議な感覚に陥った映画でした。

 

このドラマが見れるのは・・・



【香港映画】花様年華 の感想 それは過ぎ去っても確かにそこにあって朽ち果ててさえ美しい

ウォン・カーウァイの映画は初期のものは見ていたのですが、花様年華はいつか映画館で見れる機会があったら見たいな・・・となんとなくまだ見ていませんでした。だけど、なかなかそんな機会もないまま今まで来てしまったのです。ですが、ふと思いついて見てみたのでした。

 

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この独特の世界観は、やっぱりウォン・カーウァイならでは。隅々まで張り巡らされた美意識に酔いしれました。そして彼はきっと頭に鮮明に撮りたい画が浮かんでいるんだろうなと。だから撮影の際は淡々とその画を再現しているのだろうと思ったのです。

そしてこのムーディーな感じが最高なんですが、もっと感じたのはソリッドだな、ということ。こだわりを表現するには「引き算」が必要であり、徹底的に要らないもの、必要ない情報は取り除かれているのだと気づきました。引き算の美学のようなものを強烈に感じる。

例えば、トニー・レオンの妻も、マギー・チャンの夫も声や存在は感じさせられはするけれど、実際に画面にその姿を現すことはない。無機質な存在だから彼ら二人が不倫の恋だとしても生々しさがないのです。この引き算が美しさを際立たせる。もし相手も視聴者に見えていたら彼らの恋がこんなにも際立たなかったはず。

あとは出てくる場所も部屋、食堂の部屋、ガードレールの下?、ホテルの部屋、車の中、マギー・チャンの会社など限られた場所だけ。こだわりぬいたものしか映さない。どこか気を抜いた部分がなくて緊張感があるのはそのせいかも。

あれもこれもと映したくなる気がするのに、必要なもの以外をばっさりと排除することがこだわりに繋がるのだと気づいたのでした。

マギー・チャンの衣装の美しさもそれだけでも見る価値がある。その姿の美しさはちょっと涙が出そうなくらい・・・

毎日通る階段を映したまま、衣装が変わった姿を見せることで違う日の彼女だと表現するなんて魔法のようでした。

トニー・レオンもイコール哀愁みたいな演技が素晴らしい。とにかくこの映画は主役の二人も素晴らしいので、相乗効果がすごい。

しかし、こういう湿ったような映像ってどうやって撮影するんだろう?中国系の映画でよく感じる空気感なのだけど、たまらなく魅力的だなと思います。

ラストのアンコール・ワットは唐突な感じもしますが、あの場面は彼らの恋のように朽ち果てても美しいという場所でなければならなかったのだと思う。何度もすれ違ってしまった二人だけれど、確かに愛は存在した。そしてその記憶を封じ込めた後、時間がたって薄れてしまっても、その思い出は朽ちた姿さえ美しいものなのです。

 

花様年華が見れるのは・・・