この「渇き」は、パク・チャヌク監督の人間ではない存在の三部作のひとつだそうです。ちなみにあと二つは「サイボーグでも大丈夫」「イノセント・ガーデン」だそう。私が見たことのあるパク・チャヌク監督の作品は「オールドボーイ」のみなんですが、当時映画館で見て、あまりの衝撃に帰り道を茫然としながら自転車に乗って帰ったのを憶えています。暴力表現とかへの衝撃でなくて、復讐に至る理由になった愛の切なさの奔流みたいなものに飲み込まれてしまったんですよね・・・ 今でもはっきりと覚えてるので相当衝撃を受けたと思われます。
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そう考えるとやっぱりパク・チャヌク監督の作品は映画館で見た方が断然いいな!と思いました。この渇きは家で見ても集中して見ましたけれど、やっぱり堪能するには映画館だな・・・と改めて思いました。
独特の美意識とわざと場違いなシーンを差し込むようなところ、そして固定カメラじゃなくて手持ちカメラで画面ごと揺れるような撮影方法をしているシーンがあったりと、なんだか人の心を不安にさせて、観客の固定概念とか常識みたいなものを壊しガードを外した状態にして映画の世界に入り込ませるみたいな、そんな感じがします。だからやっぱりそれを全身で楽しむためには映画館で他の音や色をシャットアウトして見るのが良いんでしょうね~。
この映画もすごく良かった~とはっきりそう言える気持ちの良い感想ではなくて、心がとにかくザワザワする感じ。だから良かったとか素晴らしいとかじゃなくて印象に残る映画という感想がふさわしいのかな・・・と思うのでした。
まあ、色々なシーンが心に残ってるんですが、蛍光灯が煌々と光る部屋の中、身動きの出来ないキム・ヘスクの目だけがぐりぐりと動いている様子とか、夫を殺したもののその罪の意識からかソン・ガンホとキム・オクビンが見る水浸しの夫の幻想とか、ほらやっぱり思い出してもザワザワする・・・ 間違いなく心に何か楔を打ち込まれる感じがあるなあ。
ソン・ガンホは特別カッコいいという訳ではないと思うのに、その映画の世界に観客をいざなう力が本当にある俳優さんだなあと見る度に思います。どの作品のどの役でも確かにソン・ガンホなのだけど、ソン・ガンホではなく役の中の人だなと。キム・オクビンもバンパイアになってからの弾けっぷりが常軌を逸してて最高でした。
バンパイアが出て来るから、タイトルの「渇き」が意味するのは血が飲めなくて喉が渇いているという意味なのかと思ってたけれど、愛に飢えた心の渇きを描いていたような気がしました。見終わったあとにまたじわじわと来る感じです。