【中香映画】ソウルメイト 七月と安生 の感想 まるで境目のない世界

少年の君でいたく感動して、大ファンになってしまったデレク・ツァン監督。少年の君は結局3回見たんですが、気になっていた彼の前作「ソウルメイト 七月と安生」もやっと見てまいりました。

少年の君と二本立てで見たこともあってか、色々思うことがありました。デレク・ツァン監督の描きたいものは両作品に通じるものがあるなと思ったのでした。監督によってやり方は全く違うんだろうけど、彼の場合は違う題材を扱っても、「そこ」に光を当てた形になるのかもしれない。是枝監督もそんなタイプだと思ってるんですが、そういう方の作品は複数を見ることによって見えてくることもあるなあと思ったのでした。デレク・ツァン監督の場合は、性別とか関係なく、愛という言葉だけでは一括りに出来ないような、人間の親密な深いところで繋がっている関係性とかそういうものを描きたいのかな。それは私もとても興味のあるもののひとつ。どんな原作のものを扱っても、その人が心に中に留めている部分にフォーカスして作り上げていくものだろうから、だから、デレク・ツァン監督がこれから作っていく作品も私はきっと好きなんだろうなと想像したのでした。まあつまり、ソウルメイトも少年の君のようにとても好きだったということです。

そして、少年の君を見たとき、私はいじめ部分のことよりもそういう辛い状況に追いこまれた時に出る人間のギリギリの本音の部分であぶり出された二人の関係性に目が行ったんだけど、友人はいじめの部分にフォーカスしたみたいであんまり好きじゃなかった・・・と言ってたんですよね。もちろんどんな感想を持ってもそれぞれ正しいんですけど、その人はそれまでわりと志向が合う方だったので、あらと思ったんですね。そして、監督が映画の前後におそらく当局からの指導で入れたであろういじめの啓発的な映像の部分も入れることをいとわなかった理由も理解したんですね。それを入れたところで、彼の表現したかった本質が変質することはなかっただろうから。

さて、ソウルメイトに戻ろう。七月と安生の関係性というものが、非常興味深い描き方をされていましたね。確かに違う人間であり、人格なんだけれど、浸食しあう関係というか、境い目のない二人というか。だからジアミンが酷い男だ!なんて感想もあるんだろうと思うし、三角関係というものはありがちなものだけれど、この場合は彼が悪い人だと言い切れないような感覚に陥ったんですね。彼が二人ともに惹かれる気持ちが分かってしまうような感覚。七月の中には安生がいて、安生の中には七月がいて。七月を好きな気持ちも本当だったと思うので、彼女の安生への思いを彼も追体験してしまうような、不思議な関係のように思ったのでした。反対に安生からジアミンへの思いも七月からの彼への好意を通して見るジアミンへの思いみたいにも思えたし。彼女たち二人は全然違う性格なんだけれど、どこかその正反対さをお互い孕んでいるような、二人でひとつのような、そういう部分を彼も感じ取って、ああいう三角関係みたいになってしまったのではないかと思ってしまった。現在の常識として、男女1対1でしか結婚出来ないし、それが常識だと思っているから、本人も嫉妬に苦しむことになるから可能ではないのかもしれないけれど、例えばもっと自由な思考の世界があって、彼らが3人で暮らしていくことが許容される世界なら、案外うまく行ったのではないかなんて思ってしまった。どうなんだろ?

ラスト近くになって、次々と明かされていく真実は、実はところどころにヒントが隠されていて、ペコちゃん?みたいな赤い缶の中に安生が持っているはずのない方の絵葉書が入っていたのを見た気がして、そこで薄々気づいて驚かなかったんです。しかし、人生を交換してあげるというセリフがそんな部分までと胸に刺さって痛かったり、ひどい言葉を相手に対して言っているのに、そのせいでまるで自分が傷ついているように見えるのも胸が痛かったり。じくじくと切なく苦しいけれど、優しさも感じるという不思議な感覚に陥りました。

ところで、七月の子ども時代を演じていた子役ちゃんは、少年の君でも英語学校の生徒として出演していましたね!姚欣言ちゃんというらしい。とても可愛い。注目しておこう。

あと、キャスティング。チョウ・ドンユイはぴったりで軽やかで良かったのはもちろんなんだけど、マー・スーチュンが七月のような役を演じるイメージが無かったので驚いちゃった!チョウ・ドンユイは安生が似合ってるけど、おそらくマー・スーチュンは七月でも安生の役でもどちらでもうまく演じただろうななんて思った。ほんとに器用な女優さんだなと思いました。

これももう一度くらいみたら色々また発見があるんだろうな。すでに配信も始まっているみたいなので、また落ち着いたらゆっくり見てみたいです。

 

ソウルメイト 七月と安生が見れるのは・・・