インファナル・アフェアシリーズの最後を飾るにふさわしい完結編の3作目です。自分が生き残るために仲間を売り続けるしかないラウの辿り着く先はとても苦しい。救いのない無間地獄を出ることが出来ずにとどまり続けるしかない。自分自身への絶望感とともに。
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ヤンとラウを結びつける触媒としてのリー医師の存在の使い方がとてもうまいと思うのだった。
ケリー・チャンのクールそうな少し神秘的な存在感が精神科医としてとても効果的で。それぞれ本来の自分と対極をなす場所にいるヤンとラウが本人が気を付けていても思わず本音をこぼしてしまう場所。その秘密はあまりにも重く、それを聞いてしまったものの心にも波紋を作り出す。
リー医師のカルテを盗み見ることで自分とヤンを重ね合わせていくラウ。けれど、やっぱり彼はどんなに自分が善人だと思いたくてもそうなることは出来なかったのだった。
完膚なきまでに、突き付けられる現実というのは実に辛いものだ。とっさの判断に本性が出てしまうというのは本当で。自分は善人で警官になり切れると思ったラウが躊躇なくヨンの眉間を撃ち抜けてしまうのはやっぱり彼が黒社会の人間だということをあまりにも端的に表していて、ラウの絶望とともに視聴者にも絶望感をもたらす。丁寧に丁寧に描いてきたそれまでのストーリーがそこにきちんと集約されて、納得感とともになんとも言えない気持ちになる。絶望感?諦念?とにかく苦しい。
そしてラウは結局、自分がしてきたことの報いを受けるが如く、死ぬことも出来ず、生き地獄の中をさまよい続けるしかないのだった。
人生は因果応報なのだろうか。ヨンの殉死が不幸だったのかというとそうではなかったのかもしれない。あの苦しい生き方を終わらせることが出来るのは「死」しかなかったとしたら、それこそが救いだったのだろうか?そんなことを考えつつ、映画のストーリーはきちんと終焉を迎え、話の展開は回収されているし、綺麗にまとめられているのだけれど、心の中の苦しさの余韻だけは見終わった後に更に大きくなり、その存在感を増すようなそんな映画だったと思うのでした。